東京高等裁判所 平成6年(ネ)4777号 判決 1995年7月19日
控訴人 小林弘明
右訴訟代理人弁護士 真木光夫
被控訴人 株式会社さくら銀行
右代表者代表取締役 橋本俊作
右訴訟代理人弁護士 井原一雄
神山岩男
被控訴人 安江鐘男
主文
一 本件控訴をいずれも棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一当事者の求める裁判
一 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人らは、控訴人に対し、各自、二億九三二五万円及びこれに対する被控訴人さくら銀行については平成四年五月一三日から、被控訴人安江鐘男については同月一四日から、いずれも支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え(なお、控訴人は、当審において、原審における本訴請求をこの限度に減縮した。)。
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
二 控訴の趣旨に対する答弁
控訴棄却
第二事案の概要
一 本件の事案の概要は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第二 事案の概要」のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決二枚目表一一行目の「資金を」の次に「別紙貸付一覧表記載のとおり」を、同行目の「右貸付金」の次に「合計二億九三二五万円」をそれぞれ加える。
2 同六枚目表四行目の「訴外会社」を「長野総商株式会社」に改める。
3 同六枚目裏五行目の「証拠はない」の次に「(控訴人は、当時、余裕資金がなかったので、久喜朝日学園の預金から一時借用した金員をサニーペットに貸し付け、その後同学園にこれを返済しているのであるから、五〇〇万円の貸主は控訴人であると主張するが、これを裏付けるに足る的確な証拠はない。)」を加える。
4 同八枚目表八行目冒頭から同一〇行目末尾及び同九枚目表三行目冒頭から同六行目末尾までをいずれも削る。
5 同一一枚目裏六行目の「訴外会社」を「有限会社若林板金ほかの」に改める。
6 同二七枚目(原判決の最終部分)の次に別紙として別紙「貸付一覧表」を加える。
二 証拠
本件の証拠関係は、原審記録中の書証目録及び証人等目録のとおりであるから、これを引用する。
第三争点に対する判断
一 当裁判所も、控訴人の被控訴人らに対する本訴請求は、いずれも理由がないと判断する。その理由は、当審における控訴人の主張についての判断を次に付加するほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第三 争点に対する判断」のとおりであるから、これを引用する。
二 控訴人は、被控訴人安江が、久喜朝日学園名義の定期預金を担保として手形貸付により被控訴人銀行から控訴人に金員を貸し付けさせ、これをサニーペットに融資させる方法自体が、不法行為を構成すると主張する。
しかし、前記認定の限度において、控訴人のサニーペットに対する貸付けにつき主導的な役割を果たした被控訴人安江の本件における一連の行動は、被控訴人銀行の職務の執行として行われたものではないにせよ、銀行員の地位にある者の節度を超えているものとして、倫理的、道義的な非難を免れないのであるが、その行為が直ちに違法となり、不法行為を構成するものでないことは、既に判断したとおりである。控訴人の主張は、失当というほかない。
また、控訴人は、被控訴人安江はサニーペットが資金繰りに窮しており、借入金の返済能力がないことを知りながら、同社に対する融資を控訴人に実行させたのであり、このことだけでも不法行為が成立すると主張するのであるが、前記認定(原判決「事実及び理由」欄の第三の一2(三))のとおり、控訴人が本件貸付けをした当時において、ある程度はサニーペットの経営状況が資金的にひっ迫していたことが認められるものの、借入金についての返済能力が失われている状況に達していたとまでは認められず、まして、被控訴人安江が同社の返済能力がないことを知りながら、控訴人に融資を実行させたとは認められない。控訴人の右主張も採用することができない。
第四結論
以上の次第であるから、控訴人の被控訴人らに対する本訴請求をいずれも棄却した原判決は相当であり、本件控訴はいずれも理由がないことになる。
よって、本件控訴をいずれも棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条本文、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 三輪和雄)